どこまで細かく写せるか:露光の細かさの考え方

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このページの目次
  1. 光には、写せる細かさに限りがある
  2. 細かさを決める三つの要素
  3. 波長を短くする
  4. 液体を使って、光を集める力を上げる
  5. 工程の工夫を重ねる
  6. 一度で写せないなら、分けて写す
  7. 写す位置を、正確に重ねる
  8. このページのまとめ
  9. 関係する工程と用語
  10. 次に読む
  11. 理解度チェック

リソグラフィで写せる形の細かさが、何によって決まるのかを説明する。光の波の長さ、レンズが光を集める力、工程の工夫の三つの要素と、短い波長の光や液体を使う工夫、一度で写せない形を複数回に分けて写す方法を扱う。

写せる細かさと、分けて写す方法(模式図)

  1. 光の波長短くするレンズが光を集める力大きくする工程の工夫重ねる細かさを決める三つの要素どれかを進めると、より細かい形を写せる
  2. 一回目二回目合わせると二回に分けて写す一回ごとの間隔は広いので、それぞれは写せる
図:左は、写せる細かさを決める三つの要素と、細かくするための向き。右は、二回に分けて写す方法。一本おきの二組に分け、一組目(濃い線)と二組目(薄い線)をそれぞれ写すと、合わせて細かい間隔の線ができる。模式図、本サイトで作成

光には、写せる細かさに限りがある

工程の「リソグラフィ」のページで学んだとおり、リソグラフィでは、フォトマスクの形を、光を使ってウェーハの上の感光材に写す。チップの回路が細かくなるほど、より細かい形を写す必要がある。

ところが、光で写せる形の細かさには、限りがある。光は波の性質を持ち、細かいすき間を通ると、まっすぐ進まずに広がってしまう。そのため、ある細かさより小さな形は、ぼやけて、はっきり写らなくなる。

このページでは、写せる細かさが何によって決まり、その限りを押し広げるためにどんな工夫がされてきたのかを見ていく。

細かさを決める三つの要素

リソグラフィで写せる細かさは、主に三つの要素で決まると考えると分かりやすい。

一つ目は、使う光の波の長さ(波長)である。波長が短い光ほど、細かい形を写せる。

二つ目は、レンズが光を集める力である。レンズが、より広い角度から光を集められるほど、細かい形を写せる。

三つ目は、工程の工夫の度合いである。光の当て方、フォトマスクの形の補正、感光材の性質などを工夫することで、同じ光とレンズでも、より細かい形を写せる。

写せる細かさは、おおよそ「波長」に比例し、「レンズが光を集める力」に反比例する。そこに「工程の工夫の度合い」を表す係数がかかる。細かい形を写すには、波長を短くするか、光を集める力を大きくするか、工夫を重ねるかである。

波長を短くする

写せる細かさを上げる素直な方法は、波長の短い光を使うことである。リソグラフィに使う光は、時代とともに、より波長の短いものに移ってきた。

はじめは、水銀のランプから出る光が使われていた。その後、気体を使ったレーザーから出る、目に見えない紫外線へと移った。

さらに、極端に波長の短い紫外線を使う露光(EUV)が使われるようになった。この光は、空気にも、ガラスのレンズにも吸い込まれてしまうので、装置の中を真空にし、レンズの代わりに、特殊な鏡で光を反射させて形を写す。フォトマスクも、光を通すものではなく、光を反射するものを使う。こうした点で、それまでの露光とは装置の作りが大きく違う。

液体を使って、光を集める力を上げる

レンズが光を集める力は、レンズとウェーハの間にあるものの性質にも左右される。

ふつうは、レンズとウェーハの間は空気である。ここを水で満たすと、光が水の中で曲がる性質によって、レンズが光を集める力を大きくできる。この方法を「液浸」と呼ぶ。同じ波長の光でも、より細かい形を写せるようになる。

液浸では、高速で動くウェーハとレンズの間に、水をすき間なく保ちながら、泡や汚れが入らないようにする必要がある。

レンズが光を集める力を大きくするには、レンズを大きく、精密に作る必要もある。露光装置のレンズは、多くのレンズを組み合わせた大きなもので、わずかなゆがみも許されない。

工程の工夫を重ねる

光とレンズだけでなく、工程の工夫でも、写せる細かさは上がる。

* フォトマスクの形の補正:細かい形は、光で写すと角が丸まったり、端が縮んだりする。そこで、くずれ方を計算で見越して、フォトマスクの形をあらかじめ変えておく。* 光の当て方の工夫:フォトマスクに光を当てる向きや形を工夫して、写したい形に合った光だけを使う。* 感光材の工夫:光が当たったところと当たらないところの差を、はっきり出せる感光材を使う。

一度で写せないなら、分けて写す

それでも一度では写せないほど細かい形が必要になったとき、形を何回かに分けて写す方法が使われた。

たとえば、細かく並んだ線を、一本おきの二組に分ける。まず一組目を写して形を作り、次に二組目を、少しずらして写す。一回ごとの線の間隔は広いので、それぞれは写せる。二回分を合わせると、細かい間隔の線ができあがる。

ほかに、一度作った形の側面に膜を付け、その膜だけを残すことで、線の数を倍にする方法もある。

ただし、写す回数が増えるほど、工程が長くなり、費用も増える。二回目の形を一回目に正確に重ねる難しさも増す。EUVのような波長の短い光を使えば、こうした回数を減らせる。

写す位置を、正確に重ねる

細かい形を写せることと同じくらい大切なのが、前の層の形の上に、正確な位置で重ねることである。チップは多くの層を重ねて作るので、層どうしの位置がずれると、上下の配線や部品がつながらない。

そのため、露光装置は、ウェーハの上の目印を読み取り、位置を細かく合わせてから写す。分野「検査・評価・信頼性」で学んだ、層どうしのずれの測定も、このために行われる。

このページのまとめ

光で写せる形の細かさには限りがあり、主に光の波長、レンズが光を集める力、工程の工夫の度合いで決まる。波長の短い光へ移り、極端に波長の短い紫外線を使う露光では、真空と鏡を使う。レンズとウェーハの間を水で満たす液浸で、光を集める力を上げる。フォトマスクの形の補正などの工夫も重ねる。一度で写せない形は、何回かに分けて写す。層どうしを正確に重ねることも大切である。

  • 工程:リソグラフィ(塗布・露光・現像)
  • 用語:EUV露光:極端紫外線を光源に用い、フォトマスクの回路パターンをウェーハ上に転写する露光方式。
  • 用語:フォトマスク:半導体の回路パターンを描いた原版で、露光時に光を通してウェーハ上のレジストへパターンを転写するために使う。
  • 用語:フォトレジスト:光や電子線を当てると現像液への溶けやすさが変わる感光性の材料。ウェーハ上に回路パターンを写し取るために塗る。

理解度チェック

本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。

問1

リソグラフィで、より細かい形を写すための方法として、正しいものはどれか。

答えと解説を見る

答え:2. 使う光の波長を短くする

写せる細かさは、おおよそ波長に比例し、レンズが光を集める力に反比例する。波長の短い光を使い、光を集める力を大きくすると、より細かい形を写せる。

問2

「液浸」の説明として、正しいものはどれか。

答えと解説を見る

答え:2. レンズとウェーハの間を水で満たし、レンズが光を集める力を大きくすること

レンズとウェーハの間を空気ではなく水で満たすと、光が水の中で曲がる性質によって、レンズが光を集める力を大きくでき、より細かい形を写せる。

問3

極端に波長の短い紫外線を使う露光で、装置の中を真空にし、鏡を使う理由として、正しいものはどれか。

答えと解説を見る

答え:1. その光が、空気にもガラスのレンズにも吸い込まれてしまうから

極端に波長の短い紫外線は、空気にもガラスにも吸い込まれる。そのため、装置の中を真空にし、レンズの代わりに特殊な鏡で光を反射させて形を写す。