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シリコンの限界とワイドギャップ半導体

公開日:作成者:hysd(SemiCompass運営者)

このページの目次
  1. シリコンの強みと限界
  2. バンドギャップと、強い電界
  3. 薄い層で、同じ耐圧を得る
  4. 損失が小さく、熱も少ない
  5. 高い温度に強い
  6. 材料を比べる観点
  7. 使うときの注意
  8. このページのまとめ
  9. 関係する工程と用語
  10. 次に読む
  11. 理解度チェック

シリコンのパワー半導体が、材料の性質によって限界を持つ理由と、それを超えるワイドギャップ半導体の考え方を説明する。バンドギャップと耐えられる電界の関係、薄い層で同じ耐圧を得る利点、高い温度や速い切り替えへの強さ、材料を比べる観点を扱う。

バンドギャップと、必要な層の厚さ(模式図)

  1. シリコン炭化ケイ素窒化ガリウムバンドギャップバンドギャップ広いと強い電界に耐える
  2. シリコン炭化ケイ素窒化ガリウム薄いほど電気が通りやすい必要な層の厚さ広いバンドギャップなら薄くできる
図:左は、材料によるバンドギャップの大きさの違い。炭化ケイ素と窒化ガリウムは、シリコンより広い。右は、同じ耐圧を得るのに必要な不純物の少ない層の厚さ。バンドギャップが広い材料ほど、薄くできる。目盛りのない模式図、本サイトで作成

シリコンの強みと限界

パワー半導体は、長いあいだ、シリコンで作られてきた。シリコンは、安く、大きなウェーハを作りやすく、製造の技術も成熟している。性能も、多くの用途で十分である。

ただし、前のページで学んだとおり、耐圧と入のときの抵抗は、引っ張り合いの関係にある。この関係は、材料の性質で決まる。シリコンでは、耐圧を高くするほど、抵抗が急に増える。また、温度が高くなると、シリコンは、半導体としての性質を保ちにくくなる。高い電圧、大きな電流、高い温度、速い切り替えへの要求が高まるにつれて、シリコンの限界が目立ってきた。

バンドギャップと、強い電界

基礎の分野で学んだバンドギャップは、電子が動けるようになるために必要なエネルギーの大きさである。バンドギャップが広い半導体を、ワイドギャップ半導体と呼ぶ。炭化ケイ素や窒化ガリウムが、その代表である。シリコンに比べて、バンドギャップがはるかに広い。

バンドギャップが広いと、電子を動けるようにするのに、大きなエネルギーが要る。強い電界で加速された電子が、ほかの電子をはじき出すには、それだけ大きなエネルギーが必要になる。そのため、なだれ降伏が起きにくく、強い電界に耐えられる。シリコンの何倍もの電界に耐えられる。

薄い層で、同じ耐圧を得る

前のページでは、耐圧を高くするため、不純物が少ない層を厚くした。強い電界に耐えられる材料なら、同じ耐圧を、より薄い層で得られる。

さらに、層が薄ければ、不純物を多く入れても、耐圧を保てる。不純物が多く、層が薄いので、入のときの抵抗が、大きく下がる。同じ耐圧で比べると、ワイドギャップ半導体の抵抗は、シリコンよりはるかに小さくできる。

損失が小さく、熱も少ない

抵抗が小さいと、入のときの損失が小さい。また、薄い層は、電気を運ぶ粒が通る時間が短いので、速く切り替えられる。切り替えの損失も小さくなる。

損失が小さいと、熱の出方が少ない。冷やすための部品を小さくでき、機器全体を小さく軽くできる。切り替えを速くできれば、電気をならすコイルやコンデンサも小さくできる(「電力を変換する回路」のページ)。これが、ワイドギャップ半導体が注目される理由である。

高い温度に強い

バンドギャップが広いと、熱のエネルギーだけでは、電子が勝手に動き出しにくい。そのため、高い温度でも、半導体としての性質を保ちやすい。高い温度の環境で使いやすく、冷却を簡単にできる可能性がある。ただし、実際には、パッケージや周辺の部品の耐熱性も考える必要がある。

材料を比べる観点

材料を比べるときは、いくつかの観点がある。耐えられる電界の強さ、熱の伝わりやすさ、電子が動く速さ、結晶の作りやすさ、費用である。

炭化ケイ素は、強い電界に耐え、熱をよく伝える。窒化ガリウムは、強い電界に耐え、電子が非常に速く動く。シリコンは、費用と、結晶の作りやすさで優れる。どの材料も、すべてで優れるわけではない。用途に応じて選ばれる。

使うときの注意

ワイドギャップ半導体には、弱点もある。結晶を作るのが難しく、ウェーハの費用が高い。長く使ったときの信頼性は、シリコンほど実績が積み上がっていない面があり、確かめる試験も重要になる。

また、とても速く切り替えられるため、電圧や電流の変化が急になり、ノイズが出やすい。配線のわずかな性質でも、電圧が跳ね上がることがある。ワイドギャップ半導体の力を引き出すには、部品だけでなく、配線やパッケージ、ゲートを動かす回路の設計も、合わせて見直す必要がある。

このページのまとめ

シリコンは、耐圧と抵抗の引っ張り合いに、材料の性質による限界がある。ワイドギャップ半導体は、バンドギャップが広く、強い電界に耐えられるので、薄い層で同じ耐圧を得られ、抵抗が小さくなる。損失と熱が少なく、高い温度にも強い。材料は、電界、熱、速さ、費用の観点で比べて、選ぶ。

理解度チェック

本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。

問1

ワイドギャップ半導体が、強い電界に耐えられる理由として、正しいものはどれか。

答えと解説を見る

答え:1. バンドギャップが広く、電子をはじき出すのに大きなエネルギーが必要で、なだれ降伏が起きにくいから

バンドギャップが広いと、電子を動けるようにするのに大きなエネルギーが要る。そのため、なだれ降伏が起きにくい。

問2

同じ耐圧を、より薄い層で得られると、どのような利点があるか。

答えと解説を見る

答え:1. 不純物を多く入れても耐圧を保て、入のときの抵抗を大きく下げられる

層が薄く、不純物が多いので、入のときの抵抗が大きく下がる。損失と熱が減り、冷却の部品や回路を小さくできる。