磁石の力を電気の信号に変える磁気センサーの仕組みを説明する。ホール効果で電圧が生まれる仕組み、半導体の薄い板で作るホール素子、回転や位置の検出、電流を測る使い方、作る材料と回路との組み合わせを扱う。
ホール効果と回転の検出(模式図)
- 板の両側に電圧磁界の強さと向きが分かる
- 回転の検出磁石が近づくたびに出力が変わる
図:左は、ホール素子。半導体の板に電流を流し、板に垂直に磁界をかけると、電流を運ぶ粒が片側に寄り、板の両側に電圧が生まれる。右は、回転の検出。軸に付けた磁石が回ると、そばのホール素子の出力が変わり、回転の速さや角度が分かる。目盛りのない模式図、本サイトで作成見えない力を、電気で知る
磁石の力は、目に見えない。それでも、モーターがどれだけ回ったか、扉が閉まったか、スマートフォンがどちらを向いているかは、機器が知る必要がある。こうした場面で、磁石の力を電気の信号に変えるのが、磁気センサーである。
磁気センサーにはいくつかの方式がある。そのうち、半導体のチップに作り込みやすく、広く使われているのが、ホール効果を使う方式である。このページでは、ホール効果の仕組みと、使われ方を見ていく。
ホール効果:電流が横に押される
板の形をした半導体に、電流を流す。このとき、板に垂直に磁石の力(磁界)をかけると、電流の向きとも磁界の向きとも直角な向きに、電子や正孔が力を受ける。電流を運ぶ粒が、板の片側に寄せられる。
粒が片側に寄ると、板の両側の間に電圧が生まれる。これがホール効果であり、生まれた電圧をホール電圧と呼ぶ。磁界が強いほどホール電圧は大きく、磁界の向きが逆になると、ホール電圧の向きも逆になる。
つまり、電流を一定にして、板の両側の電圧を測れば、磁界の強さと向きが分かる。これがホール素子の仕組みである。
小さく、静かに、長持ちする
ホール素子は、半導体の薄い板でできており、動く部品がない。そのため、小さく作れ、振動に強く、長く使える。シリコンのチップの上に、回路と一緒に作り込める。
ただし、ホール電圧はとても小さい。そこで、信号を大きくする増幅器を、同じチップに作っておく。また、温度などによる出力のずれを、回路で補正する。素子だけでなく、回路と組み合わせて一つの部品になっている。
回転と位置を知る
ホール素子の代表的な使い方は、回転の検出である。回転する軸に小さな磁石を付け、そばにホール素子を置く。磁石が回って近づいたり離れたりするたびに、素子の出力が変わる。出力の変化を数えれば、回転の速さや角度が分かる。
扉が閉まったかどうかの検出も同じ考え方である。扉に磁石を付け、枠にホール素子を置く。扉が閉まって磁石が近づくと、素子の出力が変わる。磁石と素子が触れ合わないので、汚れや水に強い。
電気自動車やエアコンのモーターでは、回転する部分の位置を正しく知って、電流の流し方を細かく制御する必要がある。ここにも、ホール素子が使われる。
電流を測る
電流が流れると、まわりに磁界ができる。電流が大きいほど磁界も強い。そこで、電流の通る導線のそばにホール素子を置けば、導線に触れずに電流の大きさを測れる。
この方法は、大きな電流を扱うインバーターや電源の回路で使われる。電気を扱う回路と、測る回路が電気的につながっていないので、安全に測れる利点がある。測った電流の値は、前のページまでに学んだパワー半導体の制御に使われる。
方位を知る
スマートフォンの地図は、機器の向きを知って画面を回す。これは、地球の磁界を測る磁気センサーで行っている。地球の磁界は弱いので、とても感度の高いセンサーが必要になる。
感度を高めるために、ホール素子とは別の原理を使うセンサーもある。磁界によって電気の通りやすさが変わる薄い膜を使う方式である。用途に応じて、方式が使い分けられる。
材料と作り方
ホール素子は、電子が動きやすい半導体ほど、大きなホール電圧が得られる。そのため、シリコンのほか、電子が速く動ける化合物の半導体で作られることもある。化合物の半導体は、前の分野で学んだように、エピタキシャル成長で作る。
どの材料でも、素子の形や、電極の位置、まわりの回路の作り方が、センサーの感度と正しさを決める。製造は、成膜、リソグラフィ、エッチングの流れで行われる。
このページのまとめ
磁気センサーの代表であるホール素子は、半導体の薄い板に電流を流し、磁界をかけたときに板の両側に生まれる電圧で、磁界の強さと向きを知る。動く部品がなく、回路と一緒に作り込める。回転や位置の検出、電流の測定、方位の検出に使われる。電子が動きやすい材料ほど、大きな電圧が得られる。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
ホール効果で、半導体の板の両側に電圧が生まれる条件として、正しいものはどれか。
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答え:1. 板に電流を流し、板に垂直に磁界をかける
板に電流を流し、垂直に磁界をかけると、電流を運ぶ粒が片側に寄せられ、板の両側に電圧が生まれる。
問2
ホール素子を回転の検出に使うとき、軸に取り付けるものはどれか。
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答え:1. 小さな磁石
回転する軸に小さな磁石を付け、そばにホール素子を置く。磁石が近づいたり離れたりするたびに、素子の出力が変わる。