温度を電気の信号に変える温度センサーの仕組みを説明する。ダイオードやトランジスタの電圧が温度で変わる性質、チップの中に作り込む温度センサー、電気抵抗の変化を使う方法、離れた物の温度を測る赤外線のセンサー、使われ方を扱う。
温度を電圧で読み取る(模式図)
- 電圧と温度ほぼ決まった割合で下がる
- チップの中のセンサー熱の出やすい場所のそばに置く
図:左は、ダイオードに一定の電流を流したときの、温度と両端の電圧の関係。温度が上がると、電圧はほぼ決まった割合で下がる。右は、チップの中の温度センサー。熱が出やすい場所のそばに小さなセンサーを作り込み、温度が高すぎるときは、回路の動きを抑えて守る。目盛りのない模式図、本サイトで作成温度は、いちばん身近な測定
エアコン、冷蔵庫、体温計、自動車のエンジンなど、温度を測る機器は多い。半導体の機器も例外ではない。プロセッサは、使うほど熱を出す。熱くなりすぎると壊れたり、誤動作したりするので、温度を測って見張る必要がある。
温度を測るセンサーは、温度の変化を電気の信号に変える部品である。前のページで学んだMEMSのセンサーと同じく、半導体の性質を使って作られる。このページでは、温度が半導体の電気的な性質をどう変えるかと、それを使った温度センサーの種類を見ていく。
温度が上がると、電気の流れ方が変わる
分野「半導体の基礎」で学んだとおり、半導体は、温度が上がると電気を通しやすくなる。熱で結晶の中の電子が動きやすくなり、電気を運ぶ電子と正孔が増えるためである。金属は逆に、温度が上がると電気を通しにくくなる。
このように、温度によって電気の性質が決まった向きに変わる性質は、温度の測定に使える。電気の性質を測れば、温度が分かるからである。温度センサーは、どの電気の性質を測るかによって、いくつかの種類に分かれる。
電気の通りやすさを測る
もっとも単純な温度センサーは、温度によって電気の通りやすさが大きく変わる部品である。温度が変わると、部品を流れる電流や、部品にかかる電圧が変わる。この変化を回路で読み取れば、温度に直せる。
半導体や金属の細い線、薄い膜は、温度による変化が安定しており、温度センサーとして広く使われている。電子体温計や家電の温度の管理には、この種類が多い。
ダイオードとトランジスタの電圧を使う
シリコンのチップには、ダイオードやトランジスタが作り込まれている。ダイオードに一定の電流を流したとき、両端の電圧は、温度が上がると、ほぼ決まった割合で下がる。この性質は、温度を電圧として読み取るのに都合がよい。
チップの中に、温度を測るための小さなダイオードやトランジスタを作っておけば、特別な部品を付け加えなくても、チップの温度を測れる。ふつうの回路を作る製造の流れと同じ流れで作れるので、費用も増えにくい。
この方法の温度センサーは、プロセッサなどの大きなチップの中に、何か所も作り込まれている。熱が出やすい場所のそばに置けば、その場所の温度が分かる。
熱くなりすぎたら、守る
チップの中の温度センサーは、機器を守る役目を果たす。温度が決められた値を超えそうになると、回路が動く速さを下げて熱の出方を抑えたり、電源を切ったりする。これにより、チップや機器が壊れるのを防ぐ。
パワー半導体のように、大きな電力を扱う部品でも、同じ考え方が使われる。電流を流すと自分で熱くなるので、温度を測り、危ないときは電流を止める。温度センサーと保護の回路を、同じチップに一緒に作ることもある。
触れずに測る:赤外線のセンサー
温度の高いものは、赤外線という目に見えない光を出す。温度が高いほど、赤外線は強くなる。この赤外線を受けて電気の信号に変えれば、離れたところから温度を測れる。
赤外線を受ける部品には、赤外線で温まる小さな膜を使うものがある。膜がわずかに温まると、電気の性質が変わる。それを回路で読み取る。この部品を格子状に並べると、温度の分布を画像のように映せる。体温の測定や、設備の異常な発熱の発見に使われる。
測った温度を正しく使うために
温度センサーの出力は、そのままでは、実際の温度と少しずれている場合がある。部品ごとのばらつきがあるためである。そこで、製造したあとに、決まった温度で測って出力のずれを調べ、補正の値を記録する方法が使われる。
また、温度センサーは、測りたい場所の温度になるまでに時間がかかる。センサーが測る場所と、本当に知りたい場所が離れていると、値にずれが出る。置く場所や包み方も、測定の正しさに関わる。
このページのまとめ
半導体は、温度で電気の性質が変わる。この性質を使って、電気の通りやすさ、ダイオードやトランジスタの電圧を測れば、温度が分かる。チップの中にこうしたセンサーを作り込むと、熱くなりすぎたときに、チップを守れる。赤外線を受ける部品を使えば、離れた物の温度も測れる。測った値は、補正して使う。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
ダイオードに一定の電流を流したとき、温度が上がると両端の電圧はどうなるか。
答えと解説を見る
答え:1. ほぼ決まった割合で下がる
ダイオードの両端の電圧は、温度が上がると、ほぼ決まった割合で下がる。この性質を温度の測定に使える。
問2
チップの中に温度センサーを作り込む利点として、正しいものはどれか。
答えと解説を見る
答え:1. 熱くなりすぎたときに、動きを抑えたり電源を切ったりして、チップを守れる
チップの中の温度センサーが、熱くなりすぎそうなことを知らせる。回路が動く速さを下げたり、電源を切ったりして、チップが壊れるのを防げる。