センサーが出す信号を、正しい値として使うための工夫を説明する。出力のずれと温度による変化、製造後に行う校正、回路で行う補正、雑音の減らし方、信号をデジタルにして計算で直す流れを扱う。
出力のずれと、補正の流れ(模式図)
- ずれを調べる基準と見比べて補正の値を記録する
- 補正の流れ計算で整えてから渡す
図:左は、校正。測る量に対して、本来の出力(点線)と、実際の出力(実線)にずれがある。ずれを調べて補正の値を記録し、使うときに出力を直す。右は、補正の流れ。センサーの小さな信号を増幅し、デジタルに変え、計算で補正してから、機器の回路に渡す。目盛りのない模式図、本サイトで作成測れることと、正しく測れることは違う
センサーは、温度や圧力、動きなどを電気の信号に変える。ただし、変えた信号が、いつも正しい値を示すとは限らない。同じ作り方をしても、センサーの一つ一つに、わずかなばらつきがあるからである。また、まわりの温度が変わると、センサーの出力がずれることもある。
機器が正しく動くためには、センサーの値が、本当の値に近くなければならない。そのため、センサーには、正しさを保つための工夫が組み込まれている。このページでは、その考え方を見ていく。
出力のずれには、いくつかの種類がある
センサーの出力のずれは、おもに次の種類に分けられる。
一つは、何も測っていないときにも、出力がゼロにならないずれである。たとえば、圧力のセンサーが、圧力がかかっていないのに、少し出力する。二つめは、測る量が大きくなるときの出力の増え方が、本来の割合と違うずれである。三つめは、温度などの周りの条件で、出力がずれることである。さらに、時間がたつうちに出力がゆっくり変わることもある。
これらのずれを、できるだけ小さくするのが、正しさを保つ工夫の目的である。
製造のあとに、基準と見比べる:校正
ずれを直すための基本は、校正である。製造したセンサーを、決まった条件に置き、本当の値を知っている基準と見比べる。たとえば、圧力のセンサーに、正確に分かっている圧力をかけて、出力がどれだけずれているかを測る。
ずれの大きさが分かったら、直すための補正の値を、センサーの中のメモリに記録する。センサーを使うときには、この値を使って出力を直す。部品ごとにばらつきがあるので、補正の値も部品ごとに違う。
校正は、製造の最後のテストの工程で行われる。数多くのセンサーを、決まった条件の下で一度に測るので、テストの装置とやり方が大切になる。
温度による変化を直す
センサーの出力は、温度でずれることが多い。そこで、センサーのそばに温度センサーを置き、温度を同時に測る。いくつかの温度で、センサーの出力のずれを調べておき、実際に使うときには、そのときの温度に応じて出力を直す。
この計算は、センサーと同じチップに作った小さな計算の回路で行うことが多い。計算の回路が、測ったばかりの値と、記録しておいた補正の値から、直した値を作り出す。
雑音を減らす
センサーの信号は、とても小さい。そのため、回路が出す雑音や、まわりの機器から入る雑音が、信号を乱しやすい。雑音を減らすための工夫は、いくつかある。
信号を大きくする増幅器を、センサーのすぐそばに置く。すると、信号が配線を通るあいだに雑音が加わる前に、信号を大きくできる。また、同じ値を何回も測って平均すれば、ランダムな雑音は小さくなる。さらに、必要な範囲の周波数だけを通すフィルターで、余分な雑音を除く方法もある。
デジタルにして、計算で整える
現在のセンサーの多くは、信号をデジタルに変えてから、計算で整える。アナログの回路だけで直すよりも、細かく柔軟に直せるからである。
流れは、次のとおりである。センサーが出した小さな信号を増幅し、デジタルの値に変える。計算の回路で、記録した補正の値を使って、ずれを直す。直した値を、機器の中心の回路に渡す。アナログとデジタルの半導体が、一つのセンサーの中で一緒に働いている。
長く使うために
センサーは、製造した直後だけでなく、長い間使われる。時間がたつと、部品の性質がゆっくり変わり、出力がずれていくことがある。この変わり方の小ささも、センサーの品質の一つである。
そのため、センサーの設計では、材料や構造を、性質が変わりにくいものにする。また、製造のあとに、熱や湿気を加える試験をして、長く使っても出力が大きくずれないか確かめる。
このページのまとめ
センサーの出力には、ばらつきや、温度によるずれがある。製造のあとに基準と見比べて校正し、補正の値を記録する。温度を同時に測って出力を直し、雑音は、増幅器の置き方や平均、フィルターで減らす。信号をデジタルに変えて計算で整えることで、細かく柔軟に直せる。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
センサーの校正の説明として、正しいものはどれか。
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答え:1. 決まった条件で基準と見比べ、出力のずれを調べて、補正の値を記録する
校正では、製造したセンサーを決まった条件に置き、基準と見比べてずれを調べる。補正の値は、センサーの中のメモリに記録する。
問2
センサーの信号の雑音を減らす方法として、正しいものはどれか。
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答え:1. 増幅器をセンサーのすぐそばに置き、雑音が加わる前に信号を大きくする
信号が配線を通るあいだに雑音が加わる前に、増幅器で信号を大きくすると、雑音の影響を小さくできる。