テーマ

先端パッケージとチップレット

公開日:作成者:hysd(SemiCompass運営者)

このページの目次
  1. 要旨
  2. 市場の動き
  3. バリューチェーン
  4. 日本企業の位置
  5. 論点と今後の注目点
  6. 関係する工程・用語・学ぶ
  7. 出典

要旨

  • AI向けの半導体では、複数のチップを1つのパッケージにまとめる先端パッケージが広がっている。国際的な業界団体のSEMIは、組立・パッケージングの装置の販売額が、2026年に前の年より9.6%増えて67億ドルになり、2028年に86億ドルに達すると予測する[1]。
  • 課題の中心は、チップを並べる中継の基板(インターポーザー)の大型化である。300ミリメートルのウェーハからは大きなインターポーザーが4個しか取れないが、510×515ミリメートルの角形のパネルなら24個取れる[4]。
  • 日本では、レゾナックが国内外の27社と共同の開発の枠組み「JOINT3」を立ち上げ、Rapidusも600ミリメートル角のパネルを使う配線の層の試作に成功した[3][5]。日本企業は、材料、露光、装置、設計で関わる。

市場の動き

SEMIの2026年7月の予測では、後工程の装置の販売が伸びる。組立・パッケージングの装置は、2025年に前の年より20.8%増え、2026年は9.6%増の67億ドル、2028年には86億ドルになる見込みである(図1)[1]。試験の装置は、2025年に55.3%増え、2026年は31.0%増の153億ドル、2028年には208億ドルになる見込みである[1]。SEMIは、伸びの理由として、AIに関わる需要、先端のパッケージや異なる種類のチップを組み合わせるパッケージの採用、AIとHBM(広帯域メモリ)に求められる性能と信頼性の厳しさを挙げる[1]。

フランスの調査会社Yoleグループは、先端パッケージの市場が2030年に794億ドルになると見ている[7]。分野別では、通信とインフラの分野が2024〜2030年の伸びが14.9%で最も高く、その理由に、AIのアクセラレータ、GPU、クラウドとデータセンターの需要、チップレットを使う設計を挙げる[7]。

チップレットは、大きな回路を機能ごとの小さなチップに分けて作り、1つのパッケージの中で組み合わせて1つの製品として動かす方式である。機能ごとに合った製造の技術を選べ、小さなチップは不良の影響を受けにくい。この方式が広がるほど、チップどうしをつなぐパッケージの技術の重みが増す。パッケージは、チップを守って基板につなぐ部品から、製品の性能を決める部分の1つに変わりつつある。

図1 後工程の装置の世界の販売額の予測

単位:億ドル。期間:2026年と2028年(予測)。マウスを重ねなくても、棒や点を選ぶ(タップ、クリック、キーボード)と数値が出ます。

  • 組立・パッケージングの装置
  • 試験の装置
010020030026予28予組立・パッケージングの装置 86試験の装置 20801002003002026年予測2028年予測組立・パッケージングの装置 86試験の装置 208

2026年と2028年は、SEMIの予測です。SEMIの発表には、2027年の値はありません。

表で見る
図1 後工程の装置の世界の販売額の予測(億ドル)
期組立・パッケージングの装置(億ドル)試験の装置(億ドル)
2026年(予測)67153
2028年(予測)86208

出典:Global Semiconductor Equipment Sales Forecast to Reach a Record $229 Billion in 2028、SEMI。確認

バリューチェーン

先端パッケージでは、チップを作る前の工程と、組み立てる後の工程の間に、新しい段階が加わる(図2)。演算のチップとメモリを並べ、細かい配線でつなぐ中継の基板(インターポーザー)を作る段階である。インターポーザーをパッケージの基板に載せ、最後に試験して完成する。

TSMCの先端パッケージ「CoWoS」は、この形の代表である。CoWoSは2012年に量産を始め、当初はシリコンのインターポーザーを使った。シリコンのインターポーザーの大きさは、回路を一度に焼き付ける範囲の3.3倍、約2,700平方ミリメートルまでである[2]。より大きくするため、TSMCは、樹脂と銅で配線の層(RDL)を作る形を2023年に、小さなシリコンの部品を埋め込む形を2024年に量産に移した[2]。CoWoSの用途は、GPUやAIのアクセラレータなどの高性能の計算である。これまでに使われた製品には、NVIDIAのGPUのほか、富士通のプロセッサ「A64FX」も含まれる[2]。

インターポーザーの大型化は、作り方の変化を促す。AI向けの半導体では、載せるチップの数が増え、インターポーザーが大きくなる。レゾナックによると、300ミリメートルのウェーハからは、約73×108ミリメートルのインターポーザーが4個しか取れず、歩留まりも悪い。510×515ミリメートルのパネルなら、1枚から24個取れる[4]。一方で、パネルにすると、反りが大きくなる、位置を合わせる精度を保ちにくい、樹脂を面の中で均一に塗りにくい、といった課題がある[4]。この課題を解くため、材料、装置、設計の企業が組んで開発する場として、JOINT3が作られた[4]。

図2 チップレットを1つのパッケージにまとめるまで(模式図)

  1. 1. チップレット大きな回路を、機能ごとの小さなチップに分けて作る
  2. 2. インターポーザーに並べるチップとメモリを中継の基板に並べ、細かい配線でつなぐ
  3. 3. パッケージの基板に載せるインターポーザーを基板に載せ、試験して完成する
  4. 4. ウェーハとパネル大きなインターポーザーは、ウェーハから4個、パネルから24個取れる
図:機能ごとに分けて作ったチップを中継の基板(インターポーザー)の上に並べてつなぎ、パッケージの基板に載せる。インターポーザーが大きくなると、円いウェーハより角形のパネルの方が多く取れる。寸法は簡単にした模式図、本サイトで作成

日本企業の位置

JOINT3は、レゾナックが中心となり、国内外の27社が参加する。総事業費は260億円、期間は5年の予定で、東京エレクトロン、ウシオ電機、米国のシノプシス、シンガポールのASMPTなどが加わる[3]。茨城県結城市のレゾナックの下館事業所に開発の拠点を設け、2026年に試作のラインを動かす予定である[4]。2021年に日本企業14社で作った前の枠組み「JOINT2」の技術を土台にする[3]。

材料では、レゾナックが、高い解像度の感光性のフィルムで、有機のインターポーザーの細かい銅の配線を作る[8]。京セラは、チップレット向けのセラミックを芯にした基板や、大型で層の多い有機のパッケージを開発している[9]。

配線を描く露光の装置では、SCREENホールディングスが先端パッケージ向けの直接描画の露光装置「DW-3100」を開発した[10]。ニコンも、先端パッケージ向けに、大型の基板に対応するデジタルの露光装置を開発している[11]。東京エレクトロンは、前の工程の装置に加えて、先端パッケージ向けの装置も手がける[13]。設計では、ソシオネクストが、チップレットや先端パッケージに対応した設計に取り組む[12]。

作る側では、Rapidusが、600ミリメートル角のパネルを使ったRDLのインターポーザーの試作に成功し、2028年度に先端パッケージの量産を始める計画である[5]。千歳の拠点で、前の工程と後の工程を一貫して手がける形を目指す[5]。

このページに載せる企業

先端パッケージやチップレットに使う材料・基板、露光や組み立ての装置、設計に関わることを、公開資料で確かめられる企業を載せる。共同の開発の枠組みJOINT3の参加企業も含める。

チップレットの設計工程:設計・回路設計(設計ツールを含む)

  • ソシオネクスト

    チップレットや先端パッケージに対応した設計に取り組む。[12]

  • シノプシス米国

    設計のツールの企業として、JOINT3に参加する。[3]

インターポーザーと基板の材料工程:後工程・先端パッケージ

  • レゾナック・ホールディングス

    感光性のフィルムで有機のインターポーザーの細かい配線を作る。JOINT3の中心となる。[3][8]

  • 京セラ

    チップレット向けのセラミックを芯にした基板や、大型で層の多い有機のパッケージを開発する。[9]

配線を描く露光と組み立ての装置工程:後工程・先端パッケージ

先端パッケージを作る企業

  • Rapidus日本

    600ミリメートル角のパネルを使う配線の層を試作し、2028年度に先端パッケージの量産を始める計画である。[5]

  • TSMC台湾

    先端パッケージ「CoWoS」を手がけ、樹脂と銅の配線の層を使う形にも広げた。[2]

掲載企業は工程ごとに証券コードの順です。掲載の基準は編集方針にあります。

論点と今後の注目点

発表元の見方

SEMIは、AIに関わる需要と、先端のパッケージの採用が、後工程の装置の伸びを支えると見ている[1]。

Yoleグループは、業界の取り組みが、チップレットの規格をそろえる方向に向かっていると指摘する。規格がそろえば、採用が広がり、各社の投資の負担も軽くなるとの見方である[6]。

JOINT3は、国の助成を受けず、市場の動きに合わせて開発の目標を決め、直し、事業の獲得を主な目的とする[3]。

本サイトの見方

SemiCompassの見方です。投資の判断の材料ではありません。

1つ目の論点は、ウェーハからパネルへの移行の時期である。パネルは取れる数で有利だが、反りや位置合わせの課題がある。試作のラインの評価の結果と、実際の製品への採用の発表が、移行の速さを決める。パネルの大きさがそろわなければ、装置と材料の企業は複数の大きさに対応する負担を負う。TSMCのRDLの形のように、ウェーハのままで大型化を進める道もある[2]。ウェーハの形とパネルの形が、当面は並んで使われる可能性もあり、装置と材料の企業は両方への備えを求められる。

2つ目の論点は、日本の共同の開発の形である。JOINT3は、材料の企業が中心となり、装置と設計の企業を海外からも集めた。国の助成に頼らず事業の獲得を目指す点は、前の枠組みと違う。参加企業の製品が、どの顧客の量産のラインに入るかが、成果を測る目安になる。

3つ目の論点は、前の工程と後の工程の境目が薄れることである。TSMCは前の工程の会社だが、先端パッケージも手がける。Rapidusも前後の工程の一貫を目指す。日本では、東京エレクトロンのような前の工程の装置の会社も、先端パッケージ向けの装置を手がける。後の工程の装置と材料の企業にとっては、取引先と競争相手の顔ぶれが変わる可能性がある。

4つ目の論点は、規格である。チップレットを異なる会社の間で組み合わせるには、チップどうしをつなぐ決まりをそろえる必要がある。規格がそろうほど、設計の会社が使えるチップの選択肢が広がる。日本の設計の会社と後の工程の会社にとって、規格づくりへの関わり方が問われる。

このページは、公開資料にもとづいて関係する企業を整理したものです。特定の企業の株式の売買を勧めるものではありません。詳しくは免責事項をご覧ください。

出典

  1. Global Semiconductor Equipment Sales Forecast to Reach a Record $229 Billion in 2028, SEMI Reports(外部サイト)SEMI公表日:確認日:
  2. CoWoS(外部サイト)TSMC確認日:
  3. NEDOの手を離れ本格ビジネスへ レゾナックが27社参画の「JOINT3」設立:大型有機インターポーザー開発加速(外部サイト)EE Times Japan公表日:確認日:
  4. NEDOの手を離れ本格ビジネスへ レゾナックが27社参画の「JOINT3」設立(2ページ目)(外部サイト)EE Times Japan公表日:確認日:
  5. 経産省、Rapidusへの4000億円追加出資計画を明かす:2nm量産に向け自己資本強化(外部サイト)EE Times Japan公表日:確認日:
  6. Status of the Advanced Packaging Industry 2025(外部サイト)Yole Group確認日:
  7. Advanced Packaging Market Set to Reach $79.4B by 2030(外部サイト)Microwave Journal(Yole Groupの発表)公表日:確認日:
  8. 有価証券報告書(2025年12月期)(外部サイト)レゾナック・ホールディングス公表日:確認日:
  9. 有価証券報告書(2026年3月期)(外部サイト)京セラ公表日:確認日:
  10. 有価証券報告書(2026年3月期)(外部サイト)SCREENホールディングス公表日:確認日:
  11. 有価証券報告書(2026年3月期)(外部サイト)ニコン公表日:確認日:
  12. 有価証券報告書(2026年3月期)(外部サイト)ソシオネクスト公表日:確認日:
  13. 有価証券報告書(2026年3月期)(外部サイト)東京エレクトロン公表日:確認日: